関西大学文学部教授、および兵庫県立歴史博物館館長の藪田貫先生が、
拙著『思想としてのミュージアム』を大学の校友会誌の書評欄で紹介してくださいました。せっかくなので媒体を広げるべく、ここにアップさせてください!(村田麻里子)
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日本の博物館という空間メディアの最大の特徴は、ミュージアムの思想が完璧な制度として体現されたことによる、その機能性にあるのではないだろうか。だからこそ、日本の国公立の博物館は、殖産興業→国体論の喧伝と国威発揚→ファシズム解体と戦後民主主義の徹底と、社会状況に応じて発信するメッセージを容易にかつ機能的に変容させることが出来たのである。そして、ファシズム体制が完全に解体され、高度経済成長期になると、今度は次々と県単位で増えていく博物館は、地方の「豊かさ」の象徴となっていく。しかし、博物館の数も増え、それも達成されると、博物館が伝達するべきメッセージの不在をもたらした。現在の博物館の「窮状」や「不況」は、より本質的にはここに帰着するのではないだろうか(同書、171~172ページ)